受賞作品
1991-1996
画面の真ん中に白い紙の箱を描いただけの具象絵画。そのやや風変わりな点が特色である。 (美術評論家 仲原 佑介)
絵画の中央に折り紙の白い箱を小さく描いただけの作品。超現実的空間に置かれた発行するかのような白い箱―不思議なイメージである。(美術評論家 木村重信)
画面の真ん中に白い紙の箱を描いただけの具象絵画。そのやや風変わりな点が特色である。 (美術評論家 仲原 佑介)
佳作
福井新聞社賞
この作品は、鉛筆によって念入りに描かれた平面に白い形が浮かぶが、それはあたかも暗夜に発光するUFのごとくである。この北籔の宇宙的イメージは、闇の中の明である。 (国立国際美術館長 木村重信)
非常に細かいタッチを用いて、銅版画のような深く静謐な空間を生み出している。 (京都造形芸術大学教授 吉岡健二郎)
日本の形を軽妙に形象化した鮮やかな試み。(美術評論家 瀬木真一)
紙の箱をモティーフにキャンバスに鉛筆と油彩で克明に描写する独自の世界を何年か続けてきた。今回は箱を斜めに切断して重ねていたが、それによって従来よりも不思議な存在感を習得していた。単体を即物的に描写するユニークな表現が多くの支持を獲得した点が興味深い。(徳島県立美術館長 三木多門)
買い上げ
1996-1999
鉛筆によって濃淡のある形象を描き出しているところに、どこか禁欲的な現代の寂寥感のようなものが放射されていてユニーク。(京都国立近代美術館長 富山秀男)
奨励賞
独特の不思議な空間をすでに持っている。(伊丹市立美術館長 大河内菊雄
紙の箱とか石、金属を配しているが、とかく東洋趣味に陥りがちなモチーフだ。しかし写実が確実で浄書に流されておらず、強い印象を持った。(美術評論家 針生一郎) どこか禁欲的な光景だ。イメージをじっと見せしかも思索というものを感じさせる。静かに見せる作者の眼差しというべきものがあった。(美術評論家 建畠晢)
鉛筆で紙袋を大きく描いただけの単純な構図ながら、画面には不思議な幻想がただよう。(国立国際美術館長 木村重信) 不確かな紙袋を白黒の世界で執拗に追い続けている(東京都写真美術館長三木多門)
佳作
◎鉛筆だけによる静寂な明暗境の中で、真中の白線が闇の中へと融け入り、一種神秘的な無限空間へと心を誘い込んでいた。(名古屋ボストン美術館長・大原美術館長 小倉忠夫) ◎鉛筆で紙袋を克明に描いて、徴視的イメージを超自然的イリュージョンに転化させた。(兵庫県立近代美術館長 木村重信) ◎相変わらず独特の手法によるが、滑走路の中心線を連想させるような白線の断続に空間の深さへの工夫があって面白かった。典型的なモノクロームの表現だが、この場合は心理的必然がうかがわれて好感がもてた。(ブリジストン美術館長 富山 秀男) ◎鉛筆特有の柔らかな黒の単色諧調によって、奥深い空間を創り出している。少ない要素の組み合わせであるが、強く濃密な力を発揮し、気持ちを引き込む。前回の入選作品と比較した時、その効果の強さをはっきりと感ずる。(洋画家 中根 寛) ◎丹念な描線で画面に深玄な気が漲っていてすぐれている。僅かな白線が画面を引き立てている。(武蔵野美術大学長 前田常作) ◎淡い光を描き、映し出した物体と奥行きに不思議な無限感があった。(洋画家 宮崎進)
三洋電機株式会社賞
この作者はずっと紙の箱を描いているが、今回は紙の切れ目も加えるなどリアリティがあった。(美術評論家 針生一郎)
優秀賞
モノクローム絵画で、饒舌をこばんだ沈黙の強さを示す。(美術評論家・兵庫県立近代美術館長 木村重信) たいへん魅力ある作品である(美術評論家・伊丹市立美術館長 大河内菊雄) 鉛筆によるモノクロームの世界。円錐の頂点に突き刺ささる花一輪が、単調と見える構成に張り詰めたバランス感を生み、悠遠を思わせる静寂感を漂わせている。(美術評論家・姫路獨協大学講師 伊藤 誠)
3つに分割された円錐形の紙の中に菊花を鉛筆で克明に描き、存在感を際立たせている。(美術評論家・兵庫県立近代美術館長 木村重信) 北籔和夫はいつも入賞し、昨年も「ゆめ賞」に選ばれているが、今年は菊花の大輪で「大賞」を獲得した。(美術評論家・伊丹市立美術館長 大河内菊雄) 丹念な鉛筆描写で珍しく花をクローズアップした北籔作品が、僅かに抜きん出た。(美術評論家・姫路獨協大学講師 伊藤 誠)
宇部絵画ビエンナーレは、真の現代絵画の新人性を追求しながら、誠実に仕事をしてきた。こうした意味での新鮮な衝撃は、朝日新聞社賞の北籔和夫の仕事にも感じられた。
フィクション名空間に現れた現実の面白さがある。光と闇の効果により想像上のオブジェが前面に出現してくるようなインパクトを受ける。描写力も高い。 (美術評論家 建畠晢)
大賞
佳作
佳作
住友スリーエム賞
三席
キャンバスにひとつの直円錐と数個の紙片を鉛筆で克明に描き、不思議な幻想を現出する。このモノクローム作品は多彩色絵画があふれる審査会でひときわ目立った。(兵庫県立美術館長 木村重信)
1999-2007
一席
のしてんてん「勇気の谷間」は、パワフルに主張しようと思えばマチエールにこだわって絵の具をたっぷり盛り上げがちだが、シンプルかつ丹念に描いた作品。モチーフもふわっとしたものだし、ソフトなタッチと画題が調和している。建物のようにも見える紙袋の、吹けば飛ぶような頼りなさが静かな主張を感じさせる。静かさがじわじわ恐怖感を醸す。いい絵は画面の中に違和感を持っている、そういう要素を秘めた絵だ。(画家 大沼映夫)
他を圧倒して、大きな賞を獲得する面構えの絵だ。紙細工か、玉子の殻か、壊れやすいものを鉛筆で描いているのに、逆に絵として強い。黒い空間を丸ごと表現している感じだ。力量があると普通なら技巧におぼれがちだが、そうはなっていない。情緒性を抑えている分、絵画全体が非常に強い皮膜的な緊張感に覆われている。見る人に謎を与える。不思議な魅力に満ちている。(美術評論家 天野一夫)
奨励賞
写実で対象に迫りながらも象徴的。見る人によって抱く感情が異なる、人に考えさせる絵である。綿密に細部まで描きこんでいるが、余計なものを排除し、砂らしいものと箱しか描いていない。無機質で構成された中に、唯一の生命であるテントウムシを中心に据え、これだけが赤いのは希望をしえしているのだろうか?そういう演出が明瞭で、この上手さは大賞にも値する。ベテランらしい奥行きのある絵だ。
優秀賞
実行委員会特別賞 人間国宝美術館買い上げ
北籔和「のしてんてん道」は、海底の布に包まれた箱を鉛筆で克明に描き、超現実的なイメージを呼び起こす。独自な作風で知られる作者が、新しい領域を拓いた秀作である。(兵庫県立美術館名誉館長 木村重信)